『送還日記』好きです

4日から渋谷のシネアミューズで『送還日記』がはじまった。

これは韓国で逮捕され長期服役の後、出獄した北朝鮮のスパイを10年以上にわたって取材したドキュメンタリー映画。
韓国を代表するドキュメンタリー映画監督、キム・ドンウォンが作った。

というと、なんか、見る気がしなかった。
でも、友人のシグロの山上徹二郎さんが配給をしているので、ともかく初日に行ってみた。

そしたら、よかった。
私はこの映画が好きだ。

べきだ論のドキュメンタリーはどうも引いてしまう。
北朝鮮と聞いただけで、北にしろ、南にしろ、アメリカにしろ、資本主義にしろ、金日成にしろ、どれかの主張のために作られたものかなーー、何か観に行くのは気が重いなあと思った。

でも、違った。
まず、2時間半近い上映時間が気にならなかった。
ということは、面白かったのだ。

映画だからこそ、テレビと違って退屈させてもいいという人もいる。
でも私は一気に見られる方がいいな。

監督が怖がったり、困惑したり、感激したりしながら、スパイだった人とかかわっていく。
その素直な感じがよかった。
同じドキュメンタリーでも、ブルース・ウェーバーの『トゥルーへの伝言』を観た時に感じたイヤーーーな気分にはならなかった。
あれって、アメリカ礼賛なんだもん。

スパイの人の顔を見ていると、私の知っている誰かに似ているのだ。
しゃべり方とか、動作も共通点があるのかも。
なんか、とっても、近しい感じがした。

それは、ビジュアルだけじゃなくて、笑ったり、食べたり、冗談を言ったり、大声でみんなで歌ったり(歌は金日成を讃える歌だったから、歌自体にはシンパシーはなかったけれど、その様子はカラオケで『いちご白書をもういちど』を合唱している私と同じにみえた)しているからだろう。

いちご白書と言えば、この映画の応援団長、オーム真理経信者の日常を捉えた映画『A』で知られる森達也監督がパンフレットの中で書いていた言葉が印象的だった。
「ねえ、共産主義者は何をするかを知っているかい? 彼らは恋をし、時には子どもを作る。神に誓ってもいい」(『いちご白書―ある大学革命家のノート』より)
これをもじって、森さんはこう言っている。
「ねえ、北のスパイは何をするかを知っているかい? 彼らは恋をし、時には子どもを作る。神に誓ってもいい」

『送還日記』のサイトは
http://www.cine.co.jp/soukan/
ぜひ、この日記を読んだ人には行ってほしいな。
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